うなぎについて語る前に―特許コラムとは
突然はじめるこの企画を【特許コラム】シリーズとして伸ばしていきたい。
うなぎハンバーグについて記す前に初記事なので趣旨を少し説明する。まず特許というのは出願されてから1年半経つと誰でもその内容を確認できるようになる。そこにはWikiなんかには載ってないような超面白情報が集められていて、どれくらいかというと宇宙とか大自然、人類未踏の地くらい凄いのだ。
ただ宇宙や大自然からの発見を簡単に素人に伝えられない事もあるように、この特許情報というのは不足が無いよう専門的でやや読み辛い文書で作られる。そこを掻い摘んでカジュアルに説明し、更にそこから独自の目線で今や未来・世界を考察して記事にしようというのがこの企画である。
ちなみに正確には特許だけではなく、特許出願中の物や実用新案・登録商標も同様に扱う。カジュアルになんとなく馴染み深い言葉で綴る為に便宜上【特許コラム】とするのだ。第一弾はウナギの話。それでは本題に入っていこう。
「うなぎハンバーグおよびうなぎハンバーガー」から見る夢
特開2016-168036【うなぎハンバーグ及びうなぎハンバーガー】という出願がある。この出願は「ウナギをミンチにしたハンバーグ及び、それを使用したハンバーガー」を発明品としている。ハッキリ言って内容自体は通常の挽肉を使用する代わりにウナギミンチとウナギのタレを使用する以外は特に普通のハンバーグのソレと変わりない。これ以上カジュアルに説明する必要も無い感じだ。
詳細を実際に読んで見たい人はINPITの無料サービス「特許情報プラットフォーム|J-PlatPat」でうなぎハンバーグで検索して貰えば閲覧できるぞ。ちなみに別人が1979年に【うなぎハンバ-グステ-キの製法】なる物も出願している。
まずうなぎハンバーグは既存するのか調べた
うなぎハンバーグ又はうなぎハンバーガーを検索すると、うなぎハンバーガーは実は結構ヒットするのだ。極一部の店舗とか期間限定とかでちょいちょい作られ売られているらしい。但し重要なのはここで言われるうなぎハンバーガーは全て「蒲焼き、又はそれに近い状態のウナギ」を挟んだバーガーとなっている。上記出願の説明するところのうなぎハンバーガーは「うなぎハンバーグをパンで挟んだ物」をうなぎハンバーガーとしている。
つまりネットで調べた程度ではこの発明、「うなぎハンバーガー」は未だかつて大々的に販売されていない。確かに言われてみれば高級魚であるウナギをミンチにしてしまうなんて贅沢な使い方は新しい発想かもしれない。そしてうなぎハンバーグの方はてんでヒットしない、出てくるのは精々蒲焼きのタレをハンバーグに使ったことでうなぎ風を謳う物くらいだ。
ウウム、うなぎハンバーガー食べてみたくなってきたぞ。
うなぎハンバーグの発案者
この出願は個人名義で行われており、その個人は軽く調べた程度では特にヒットせず、他の出願も出していないのだ。恐らく何とか大学の教授や大企業の社長という訳では無いのだろう。企業が企業名で出願するケースや有識者が出願するケースが多いのだけれど。とはいえ素人個人で出願するのも特別珍しい事例という程でもない。
実は特許というのは専門的な書類製作を自分で行うのであれば1万5000円程で出願(審査はまだの前段階)は出来る。これでも充分遊びで出す金額では無いと思うのだが、このうなぎハンバーグを申請した個人は「弁理士を代理人として立てて出願している」。
特許出願において弁理士さんに依頼するのは、お金があるのならば至極普通の行為なのだが、通常この辺の依頼をする場合、少なくとも約20万以上の費用がかかるのだ。それだけにこの人物のうなぎハンバーグにかけた情熱の強さという物が想像に難くない。その人の人柄にさえ興味が出てきた。
【結論】その出願人の夢は「うなぎバーガー屋の開業」
さて、想像力がかきたてられるが、我々の妄想・推論にもそろそろ結末が必要であろう。ずばりこの小見出しの通り私の答えは「うなぎバーガー専門店の開業」とみる。ひょっとしたら同時にうなぎハンバーグ単体の販売なんかも視野に入れているかもしれない。
何故そこに行き着くのかというと、特許の出願は大きく分けて三つの目的で行われる。一つは「特許を使って貰って、使用料で儲けようという物。」もう一つは「自身の商売を守る為、真似されたり逆に特許申請されてイチャモン付けられない為の防衛策」とする物。そして最後に「特許出願中という謳い文句で宣伝できる」という物。
うなぎが絶滅危惧だなんだと騒がれるこのご時世に最初の一つは少し考えにくい。企業が食いついて使って貰える、或いは知らずに使ってくれるとは考えがたい。となると残りの二つだがどちらもやはり自分でうなぎバーガー屋をやる事を視野に入れた時に働く効果だと思う。
きっと出願に至るまでに実際にうなぎハンバーガーを製造し、試食をしてこれはイケる!と判断されたのだと思う。もしかするとそこに行き着くまでにウナギハムやウナギポテトとかも試作しているかもしれない。或いは逆にアナゴハンバーグやタコハンバーグも検討したかもしれない。その中できっとうなぎハンバーグこそ最良だったのだ。
出願されたのが2015年で未だに噂のかけらも見つからないので、ひょっとしたらもう何らかの理由で頓挫してしまった夢なのかも知れないが、読者の皆には「うなぎ代替え品」を食べる際、「うなぎハンバーグ店開業に夢をかけた一人の熱い男がいた(かもしれない)」事に思いを馳せてみて欲しい。
いや、実は難航しているだけで来年あたり突然開店する可能性だってまだあるのだ。その時は多分和風老舗系じゃなくてハワイアンバーガー屋みたいなオシャレ店舗だと筆者は勝手に思っている。